笑顔のたすき
あれは当時50歳の春でした。
必死に育てた三人の子どもも手も離れ、何をしたらいいのか分からない毎日を過ごしていました。
そこで、一生懸命頑張って来た私のストレスまみれの体にご褒美をあげようと思い、ネット検索。
どこにしようかなぁ~・・・
ひらめきを信じてactiveBodycareももいを予約したのはもう6年も前になります。
初めてのエステ。
前日からワクワク!駐車場に着いてドキドキ!緊張です!
そんな私を出迎えてくれた彼女が、この後、私の人生観を変える相手になるなんてあの時は思いもしませんでした。
目と目が合った瞬間に、一瞬にして緊張でこわばった肩の力が抜け、カウンセリングが始まりました。
「え?カウンセリングってこういうものなの?」
想像していた堅苦しいものとは違い、楽しいおしゃべりタイムが始まりました。
でも、さすがはプロ。
最後にはしっかり私に合ったプランを提供してくださり、ニッコリ微笑んだ彼女の笑顔を今でも鮮明に覚えています。
じゅうぶん納得している私は、いよいよエステ通い開始です。
今まで知らなかったキラキラ楽しい癒しの時間。
心も体も軽くなってゆき、毎日の生活が幸せだと思える感覚を取り戻したのです。
この時でもじゅうぶん本気で私の体と心に向き合ってくれる彼女に感謝していました。
そんな私がももいに通い出して3年ほど経ったある日。突然乳がんを宣告されました。
頭が真っ白。
何も考えられない・何も聞こえない。
よく言われるそんな言葉があの時の私を覆い、
「みんなが言ってることは本当なんだな」
そんなことをまるで他人事のように考えている自分がいました。
一番に知らせたのは、夫でもなく家族でもなく、彼女でした。
何を話し、何を聞いたかは全く覚えていませんが、彼女の声で立ち上がり、家に帰れたことだけは覚えています。
そんな彼女が、
「手術の時は絶対付き添うからね。目が覚めたときはそばにいるからね。頑張ってね」
そう言ってくれたことが嬉しくて、勇気に変わりました。
そして手術当日。
術後、ゆっくりもうろうと目が覚めようとした私の目に、一番に飛び込んできたのはクリクリとうさぎのような彼女の目です。
「本当にずっと居てくれたんだ」
深々とずっしり重い時間が、一瞬にして温かい時間へと変わったあの感覚。
今でも覚えています。
それから数日後、ガーゼを取る日がやって来ました。
現実を目の当たりにする瞬間です。
覚悟はしてたものの、真っ直ぐ平らになった傷だらけの左胸を見て涙が止まりませんでした。
そんな失意のどん底に落とされた私の目にまた飛び込んで来たのは、あのクリクリのうさぎの目です。
なんというタイミングでのお見舞いでしょう。
彼女はそんな私を一瞬で察し、私が落ち着くのを待ち、そしてツンと右胸を指して
「こっちがあるじゃないですか」と私の目を見て普通に言ったのです。
本当に普通に言いました。
いつものトーンで、
いつもの表情で、
いつもの彼女で
「今日はいい天気ですね」くらいのテンションではっきりそう言ったのです。
声にならないくらいビックリしました。
左胸がない私は全然普通じゃないのに!
そうだ。彼女はそういう人だった。
彼女に、普段エステをしてもらう時も、
お客様である私の欲しい慰めの言葉をもらえないことが多々あります。
私を思ってくれるからこその厳しい言葉が出てきます。
でも、彼女の手からは私を応援してくれている想いがいつも伝わって来るから心に響くのです。
今回も、彼女は、
かわいそうな私をかわいそうな人にしないで受け入れてくれたのです。
そして握ってくれる手から応援が伝わって来ます。
その時もまた私は、
彼女の柔らかい優しい手のおかげで笑顔を取り戻すことができました。
彼女はエステティシャンという仕事に誇りを持っています。
そんな彼女が楽しいことも辛いことも全部受け止めてくれる。
そして必ず答えを引き出してくれるから、サロンですれ違うお客様・スタッフの人たち、みんなが笑顔です。
サロンは笑顔に溢れています。
私たちにとって今、なにが必要なのか大切なのか、どうすれば私たちが笑顔になれるかを、彼女は日々考えてくれています。
そんな信頼関係を築いているたくさんのお客様に支えられて、
「相手のお役に立てる自分になりたい」
と貪欲にスキルアップを図り、さらに上へ上へともっと大きな夢を現実にするために、彼女は努力し続けるでしょう。
ガン宣告から二年半。
あれから毎月一日、彼女は伊勢神宮へお参りに行ってくれ、そして、朔日餅という名の暖かい応援を、毎月毎月我が家まで届けてくれます。
だから私はまだまだ生き続けられます。
私の体はガンと共に歩んでますが、心の中にガンはいません。
たまたま行ってみたエステ。
ちょっとダイエットしようかな?と思った偶然の出会いが、こんなに大きく私の人生に関わる関係になるとは思ってもいませんでした。
ようこ先生、ありがとうございます。
私もようこ先生の様に、笑顔のたすきをつなげて行きます。